この作品を取り上げるにあたって、まず『音楽』というイメージがありました。
もしかしたら、リヒャルト・シュトラウスがこの戯曲を基にオペラを書いている事もあるかもしれませんが、そんな洗練された音楽ではなくて、もっとプリミティブな音楽のイメージでした。
この物語の登場人物達は他人とうまくコミュニケーションが取れません。音楽も一つのコミュニケーションです。他の人の音楽が聴こえなくなると忽ち音楽は壊れてしまいます。
人間関係も同じだと思います。他の人の声や叫びが感じられなくなった時に、忽ち何かが崩壊してしまうのです。

演出  田丸 一宏