演出ノート
この作品は、『かもめ』『三人姉妹』『ワーニャ伯父さん』『桜の園』『イワーノフ』というチェーホフの代表的な作品の台詞で構成されています。
その中でも焦点を絞っているのは、『かもめ』と『三人姉妹』に登場するマーシャという女性です。
マーシャは、不安や悩みを抱えながらも強く生きていきます。これはチェーホフの作品によく出てくる女性像でもあります。彼の作品の中では、男性は死を選び、女性は生きることを選びます。
チェーホフの作品の中には、自分達が死んだ後、100年、200年経った時に、その時代の人が今の自分達のことをどう思うのか、という内容の台詞がよく出てきます。何故生きているかわからない彼らはその意味を自分達の死後の未来に託そうとしますが、自分達の傷跡を未来に残せる確信もないまま生きている意味を模索します。結局彼らは生きる意味を見出せないまま、ただ生きていく。
チェーホフが出した、生きていく意味の答えは何だったのでしょうか?
その答えはチェーホフが書いた幕切れのト書きにあるような気がします。
代表的な作品のほとんどは幕切れのト書きは音の描写になっています。
その音は登場人物達の人生の「諸行無常の響き」であるような気がしてならないのです。
演出 田丸一宏
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